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パッシブハウス / 住宅
パッシブハウス / 住宅















豊かな自然、先進的な教育機関、そして手厚い移住支援を背景に、近年、佐久穂町では子育て世代の移住者が急増しています。そんな中で誕生した、佐久穂町エリア初となる Passive House(パッシブハウス)です。
この住まいの施主ご家族も、幼い2人のお子さんの未来を見据え、自然豊かな環境を求めて関東から佐久穂町へ移住してきました。移住当初は木造の戸建て賃貸に暮らしていましたが、信州の厳しい寒さには大きな驚きがあったといいます。そうした体験から、この場所での定住を決めてお家を建てることを決心した際には、あたたかい家に住みたいという思いが強くありました。
また、過去の住宅づくりの経験をふまえ、今回は「原理原則に基づいた、コンパクトで無駄のない住まい」を希望されました。そこで、緻密な計算と検証を重ね、周囲の自然環境を最大限に取り込みつつ、常に快適で、できる限りエネルギー消費を抑えるPassive Houseの設計に至りました。
敷地は南東向きで、東西に広がる形状です。寒冷地のPassive Houseでは、冬の日射取得のために建物を真南に向けることが有利ですが、それでは敷地を斜めに横断してしまい、無駄なスペースが生じてしまいます。そこでこの家では、建物の東側半分を真南に向けつつ、西側半分を「への字」に折り曲げて敷地に沿わせる設計としました。これにより、南側にはまとまりのある庭を確保しつつ、効率的に日差しを取り込める配置としています。
それにより、建物内部に生まれた斜めの壁は、LDKに程よい空間の広がりをもたらし、コンパクトながらも開放感ある生活動線を実現しています。
さらに、日射を多く取り込むために、リビングや主寝室のある南側には大きな掃き出し窓を設けました。しかし、主寝室の掃き出し窓は外からベッド側面が見えてしまうため、落ち着かない印象や美観の問題が懸念されました。そこで、建物の東側(主寝室側)はリビングよりも床を一段下げることで、窓の下部に立ち上がりをつくり、視線を遮る工夫を施しました。これにより、寝室などのプライベートエリアは足元が隠れて安心感があり、より安らげる空間となっています。
また、床を下げたことで生まれた天井高を活かし、子ども部屋の上部にはロフトを設置。リビングからアクセスできるこの空間は、年齢の違う2人のお子さんの成長に合わせて使えるキッズスペースとして計画しました。そのロフトと廊下の天井は、洞窟の入り口のような丸みを帯びた造形とし、斜めの壁と相まって、リビングからのアクセントとなる可愛らしいデザインに仕上げています。
自然環境を無駄なく享受するための合理的な建物形状を追求ながらも、性能や効率性に偏ることなく、この家には、暮らしの中にリズムと彩りをもたらす工夫が随所に込められています。
無駄なエネルギーを極力使わないPassive Houseに住むという選択は、地球規模の気候変動を食い止め、この家で育つ子どもたちの未来の可能性を広げることにつながっていきます。
| 場所 | 長野県南佐久郡佐久穂町 |
|---|---|
| 用途 | 個人住宅 |
| 竣工 | 2025年5月 |
| 構造 | 木造平屋建て |
| 種別 | 新築 |
| 敷地面積 | 414.71 m² |
| 建築面積 | 90.95 m² |
| 延床面積 | 79.36 m² |
| 建築性能 | Ua値 0.13W/m2・K |
| 仕様 | 屋根断熱材:デンマークストーンウールt=400mm |