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Juuri Passive House Report vol.2

2025.03.21

Juuri Passive House Report vol.2

 こんにちは◎
Juuri のよしみです。前回に引き続き、今わたし達が力を入れているパッシブハウスの魅力をご紹介します!

 さて、先日、長野県佐久穂町で計画中のパッシブハウス認定申請予定の物件が地鎮祭を終え、晴れて無事着工となりました!
こちらのお施主様は、もともとパッシブハウスのことはご存知ではなかったのですが、環境問題に関心があったのと、原理原則に基づいてお家づくりをしたいというご要望があったので、「これはパッシブハウスしかない!」と、いうことでおすすめさせて頂きました。
そしてありがたいことに、わたしどもの熱意にご共感頂きパッシブハウスを目指すことになったのです!

 
 では、パッシブハウスを目指すとなれば、実際にどのようにお家を設計していくのでしょうか。また、前回お話しした、認定を取るために必要な断熱性能だけではない “なにか” とはなんなのか!?今回はそのあたりをご紹介します!

前回のおさらいになりますがパッシブハウスの基本的な適合条件は以下のとおりです。

・冷暖房の年間需要 が各15kwh/m2以下

・年間一次エネルギー消費量が120kwh/m2以下 

・気密性能として50Paの加圧時の漏気回数0.6回以下

以上、でしたね!


[パッシブハウスのつくりかた]

 この難しい適合条件をクリアするために、パッシブハウスに取り組むビルダー、設計事務所は日々、これを研究し、情報交換することで、自社の建築の省エネ性能を高め合っています。そのため、この適合条件をクリアするには、各社オリジナリティあふれる様々な方法がありますが、おおまかにそれらをまとめると、下の3つのやり方になるかと思います。

1.断熱/気密性能を高める(大前提!)
2.自然の力を利用する
3.より省エネルギーな冷暖房/換気設備を導入する

1.の「断熱/気密性能を高める」は大前提で、どうすればいいかは簡単!性能の良い断熱材で、より厚く、隙間なく、お家を包んであげれば良いのです。
魔法瓶なんかと考えは同じです。性能の悪い魔法瓶に沸かしたお湯を入れればすぐ冷めてまた温め直すエネルギーが必要ですよね。でも、高性能な魔法瓶であれば、中のお湯はいつまでも暖かいままです。それはお家の冷暖房需要でもまったく同じことがいえます。そのため、たくさん断熱するのが一番効果的に、かつ簡単にパッシブハウスに近づける方法なんです!

しかし、断熱すればするほど、より高性能な断熱材を使うほど、当然、その分のコストがかかってしまうので、お家を建てる費用が高くなってしまう。。。!!そのため、この「断熱/気密性能を高める」は、大前提ではあるものの、限界があるのです。

では、3.の「より省エネルギーな冷暖房/換気設備を導入する」はどうでしょう?
ある程度、省エネルギーな設備を使うのもパッシブハウスをつくる上での前提ではあるのですが、その性能が高ければ高いほど、断熱材と同じく費用は上がりますし、正直、ここは設備機器のメーカーさん頼みです。また、これも前回お話ししたとおり、なるべく設備に頼らなくても良いくらいにお家自体の省エネルギー性能が高ければ、より高い快適性を実現できます。

そのため、断熱性能だけではない “なにか” とは、ずばり2.の「自然の力を利用する」になります!ここの部分が、おそらくパッシブハウスに取り組むみなさんが頭を悩ませるところであり、おもしろい部分でもあり、Juuriが普段提案しているお家との大きな違いになります。



[自然の力]

 さて、自然の力を利用するとは具体的にどういったことでしょう?

単純に太陽光パネルなどで自然のエネルギーを電気に変換して活用するっていうのもあるのですが、適合条件にある冷暖房の年間需要に大きく影響し、ZEHなどの他の認定では計れない部分でもあるのが、敷地条件に合わせて、日射をコントロールするところです。
それを単純に言うと、冬は窓からたくさん日差しをとり入れてお部屋を暖かく、夏は日差しをシャットアウトしてお部屋を涼しくってことです。

なんだか、お家つくる上であたりまえの考え方な気がしますよね?

当然、わたしたちも普段設計する上で、寒い地域であれば日差しをたくさん取り入れられる南側に窓を設けて、北側は窓は少なくなんていう日差しの取り入れ方というのは、当然考えています。

しかし、パッシブハウスでは、それが冷暖房需要にどれほど影響するのかを詳細に検証し、窓をつける方角と位置、数、大きさなどを緻密に設計していくのです!


[ PHPP & design PH ]

 もう少し具体的にお話しすると、設計しているお家が先ほどの適合条件に適合しているかを検証するために、パッシブハウスジャパンが展開しているPHPPとdesign PHという専用のソフトを主に使っています。

PHPPでは、そのお家が建つ場所の気候条件や、断熱材の仕様、窓の仕様や、設備の仕様などを細かく入力していくことで、まずはそのお家自体の断熱性能と、このお家で普段生活する上で使ってしまうことが想定される冷暖房、給湯などの消費エネルギーを計算してくれます。

design PHでは、設計しているお家と、その周りの建物や樹木、山などの起伏等などの影の影響が出そうなものを3Dソフトで立体的におこしていき、そこに、日差しの動きや、まわりのものからの反射を当てこんでいくことで、日射や影が、このお家の冷暖房需要にどう影響するかを検証していきます。

この二つのソフトを用いることで、必要な断熱の仕様を検討し、日射をコントロールして自然の力を活かし、冬は暖かく、夏は涼しいお家をつくっていくのです!
これがとても難しくて、例えば、寒いエリアに建つお家の場合、暖房のエネルギーをたくさん消費してしまいます。その対策のために、南側にたくさん大きな窓を設けたとします。それにより、窓から入る日射が暖房器具の代わりにお部屋を暖めてくれるので、暖房のエネルギーは下げることができますよね。しかし、その場合に何の対策もしないと、夏もたくさん日射がたくさん入り込んでしまうのでお部屋が暑くなり、今度は冷房のエネルギーが上がってしまいます。

求められる適合条件が厳しいがゆえ、冷房or暖房どちらかの対策をすると、今度はどちらかが適合条件に当てはまらなくなる。。
ここが難しいんですよパッシブハウス!

どちらかの季節だけではなく、一年中、しかも寒い地域でも暑い地域でも、冷房と暖房どちらもエネルギーを抑えられるように、PHPP、design PH、図面をいったりきたりしながら、断熱と窓や影の影響に微妙な調整を加えていき、徐々にお家の省エネルギー性能を適合条件まで高めていく、これがパッシブハウスのつくりかたになります。

PHPPのパッシブハウス認定判定画面


designPHによる日射遮蔽物の検証


難しそうですよね?難しいんですよ!本当に!

しかも、人が住むお家なんで省エネルギーのことだけ考えてれば良いわけでは、当然、無いんです。この厳しい適合条件をクリアしながら、実際にお住まいになる方の生活スタイルに合う間取りだったり、デザイン性、コスト、耐震性、お隣さんとの関係や土地の起伏。。etc

他にもいろんな条件をクリアしないといけないんです!

でも、本来はお家づくりはそういうものだと思うんです。設計士の経験や知識を用いて、いろんな条件をクリアしていかなければならない。その中で、パッシブハウスはドイツで長年培われてきた省エネルギーに関する知識の蓄積であるこの認定をクリアすることで、お家の省エネルギー性能と快適性を確実なものとしてくれるんです。

 さて、パッシブハウスの魅力をお伝えすると言っておきかなら、いきなりハードルが上がるお話になってしまいましたが、次回以降、パッシブハウスの適合条件をクリアして、実際に着工している物件を例に、パッシブハウスを身近に感じていただければと思います!

。。。つづく

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